急性毒性
経口
GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、700 mg/kg (純度40~60%、100%純度換算値: 280~420 mg/kg) (農薬工業会 (農薬時報別冊「農薬技術情報」 (1992))、765 mg/kg (純度62~65%、100%純度換算値: 474~497 mg/kg) (DFGOT vol. 5 (1993))、690 mg/kg (純製品、EU SCHER (2016)) との3件の報告があり、1件が区分3~4、2件が区分4に該当する。件数の多い区分を採用し、区分4とした。
経皮
GHS分類: 分類できない
ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (純度62%、100%純度換算値: > 1,240 mg/kg) (DFGOT vol. 24 (2007)) との報告があり、区分4又は区分外に該当するが、この値だけでは区分を特定できないため、分類できないとした。
吸入:ガス
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類できない
ラットの4時間吸入試験のLC50値として、> 0.155 mg/L (DFGOT vol. 24 (2007)) との報告があるが、この値だけでは区分を特定できないため、分類できないとした。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分2
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG 404準拠) で、乾燥した本物質では皮膚刺激性は認められないのに対して、湿らせた本物質では軽度から中等度の刺激性を認めたとの報告 (DFGOT vol. 24 (2007)) がある。また、ヒトに対して顕著な眼刺激性がみられるとの報告 (DFGOT vol. 24 (2007)) がある。よって、これらの結果から総合的に判断し、区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分1
ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG 405準拠) において、瞬膜の壊死、角膜混濁、重度の刺激性を生じ、又は適用後7日目の観察で結膜浮腫 (グレード4)、紅斑 (グレード2)、虹彩のうっ血 (グレード2) 、角膜混濁 (グレード4) の眼刺激性が生じたとの報告 (DFGOT vol. 24 (2007)) から、区分1とした。なお、本物質の水溶液は強アルカリ性を示すとの記述 (EU SCHER (2016)) がある。EU CLP分類において本物質は Eye Dam. 1 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない
データがなく分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 区分1
モルモットを用いた改変マキシマイゼーション試験 (OECD TG 406準拠) において本物質は陽性であるとの報告 (EU SCHER (2016)) がある。また、労働者65名でのパッチテストによる皮膚感作性調査では感作性が認められなかったとの報告 (EU SCHER (2016)) があるが、動物試験の結果を否定できないことから、区分1とした。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない
ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、小核試験で陰性 (EU SCHER (2016))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で弱い陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性である (NTP DB (Access on June 2017)、ACGIH (7th, 2001)、EU SCHER (2016))。
発がん性
GHS分類: 分類できない
ラット及びマウスを用いた2年間混餌投与による発がん性試験において、ラットでは投与に関連した腫瘍の増加はなかった (NTP TR163 (1979)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。マウスでは雄で血管肉腫に用量相関性がみられたが、統計的に有意差はなかった。雌ではリンパ腫又は白血病に用量相関性がみられ、高用量群では統計的有意差があったが、発生率は背景データの範囲内であった (NTP TR163 (1979)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。したがって、雄マウスの血管肉腫も雌マウスのリンパ腫又は白血病も本物質投与との関連性はないと考えられ、本物質はラット、マウスともに発がん性を示さないと結論された (NTP TR163 (1979)、PATTY (6th, 2012))。既存分類としては、ACGIHがA4に分類している (ACGIH (7th, 2001))。以上より、分類できないとした。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない
妊娠ラットに強制経口投与 (妊娠6~19日) した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、子宮重量減少) がみられた 21 mg/kg/day 以上で、胎児には軽微な影響 (胎児体重の低値) がみられただけであった (EU SCHER (2016))。しかし、生殖能・性機能への影響に関する情報がなく、データ不足のため分類できない。