安全データシート

1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン
  • CB番号: CB6108911
  • CAS: 60-57-1
  • 同義語: 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 木材用の防腐剤、防虫剤及びかび防止剤、塗料用 (防腐用、防虫用又はかび防止用のものに限る。)、羊毛 (脂付き羊毛を除く。)、殺虫剤 (販売禁止農薬) (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
物理化学的危険性
自己反応性化学品   タイプG
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1 (神経系、肝臓、腎臓)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1 (神経系)
生殖毒性   区分1B 追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響
発がん性   区分1B
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)   区分1
急性毒性 (経皮)   区分2
急性毒性 (経口)   区分2
分類実施日
(環境有害性)
平成18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)
環境に対する有害性
水生環境有害性 (長期間)   区分1
水生環境有害性 (急性)   区分1

GHSラベル要素

絵表示
GHS06GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
飲み込むと生命に危険 皮膚に接触すると生命に危険 吸入すると生命に危険 発がんのおそれ 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ 授乳中の子に害を及ぼすおそれ 神経系の障害 長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、肝臓、腎臓の障害 水生生物に非常に強い毒性 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
安全対策
使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 容器を密閉しておくこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 眼、皮膚、衣類につけないこと。 妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。 取扱後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 環境への放出を避けること。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 呼吸用保護具を着用すること。
応急措置
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 口をすすぐこと。 漏出物を回収すること。
保管
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。
廃棄
内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性
情報なし

3. 組成及び成分情報

  • 単一製品・混合物の区別: 単一製品
  • 化学名又は一般名: 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン
  • 別名: ディルドリン
  • 濃度又は濃度範囲: 情報なし
  • 分子式 (分子量): C12H8Cl6O (380.91)
  • CAS番号: 60-57-1
  • 官報公示整理番号
    (化審法)
    : 4-299
  • 官報公示整理番号
    (安衛法)
    : 情報なし
  • 分類に寄与する不純物及び安定化添加物: 情報なし

4. 応急措置

吸入した場合

空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。

皮膚に付着した場合

多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
汚染された衣服を脱がせる。
医療機関に連絡する。

眼に入った場合

数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。

飲み込んだ場合

直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
吐かせない。
安静。

急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

吸入: 「経口摂取」参照。
皮膚: 吸収される可能性あり!「経口摂取」参照。
経口摂取: 痙攣、めまい、頭痛、吐き気、嘔吐、筋攣縮。

応急措置をする者の保護

情報なし

医師に対する特別な注意事項

曝露の程度によっては、定期検診を勧める。
市販の製剤に用いられている溶剤が、この物質の物性および毒性を変化させることがある。

5. 火災時の措置

適切な消火剤

小火災: 粉末消火剤、二酸化炭素、散水 大火災: 水の散布、噴霧、一般の泡消火剤

使ってはならない消火剤

棒状注水

特有の危険有害性

不燃性。 有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。

特有の消火方法

情報なし

消火を行う者の保護

情報なし

6. 漏出時の措置

人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置

保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

環境に対する注意事項

周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。

封じ込め及び浄化の方法及び機材

下水に流してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの 密閉式容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7. 取扱い及び保管上の注意

取扱い

技術的対策
「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
妊娠中及び授乳期中は接触を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
製剤に溶剤が使用されている場合は、その溶剤のICSCも参照のこと。
作業衣を家に持ち帰ってはならない。
接触回避
「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。

保管

安全な保管条件
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
消火により生じる流出物を収容するための用意
食品や飼料および混触危険物質から離しておく。
排水管や下水管へのアクセスのない場で貯蔵する。
安全な容器包装材料
国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8. ばく露防止及び保護措置

管理濃度

未設定

許容濃度

日本産衛学会 (2020年度版)
第3種粉じん: その他の無機及び有機粉じん* 吸入性粉じん: 2 mg/m3 総粉じん: 8 mg/m3 * 多量の粉じんの吸入によるじん肺を予防する観点から、この値以下とすることが望ましいとされる濃度。

許容濃度

ACGIH (2020年版)
TLV-TWA: 0.1 mg/m³ IFV (Skin)

設備対策

粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所換気装置を使用する。

保護具

呼吸用保護具
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
手の保護具
保護手袋を着用する。
眼の保護具
保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、安全ゴーグルまたは顔面シールドを着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具
保護衣 (化学防護服) を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い
ナフタレン様の臭い

融点/凝固点

175.5℃ (HSDB (Access on May 2020))

沸点、初留点及び沸騰範囲

330℃ (U.S.EPA: Mpbpwin v1.43)

可燃性

不燃性 (ICSC (1998))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

該当しない

引火点

該当しない

自然発火点

該当しない

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

該当しない

溶解度

水: 0.195 mg/L (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) アセトン、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素に可溶 (HSDB (Access on May 2020))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 5.40 (HSDB (Access on May 2020))

蒸気圧

5.89E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020))

密度及び/又は相対密度

1.7 g/cm³ (ICSC (1998))

相対ガス密度

該当しない

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

反応性

「危険有害反応可能性」を参照。

化学的安定性

情報なし

危険有害反応可能性

加熱すると、分解する。 塩化水素などの有毒なフュームを⽣じる。 酸化剤および酸と反応する。 保管中、塩化水素を徐々に生成し、⾦属を侵す。

避けるべき条件

加熱、混触危険物質との接触

混触危険物質

酸化剤、酸

危険有害な分解生成物

塩化水素などの有毒なフューム

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】
(1)~(9) より,区分2とした。
なお、旧分類はヒトのデータを基に分類されたが、旧分類の根拠データ (LD50: 5 mg/kg) とは異なるLD50推定値もあり、ヒトのLD50値を利用して分類するのは制限があると考え、今回はガイダンスに従い実験動物のデータで分類した。

【根拠データ】
(1) ラット (離乳前児) のLD50: 25 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、ATSDR (2002)、EHC 91 (1989))
(2) ラットのLD50: 24~167 mg/kg (IPCS PIM (1996))
(3) ラット (成体) のLD50: 37 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(4) ラットのLD50: 37~46 mg/kg (ATSDR (2002))
(5) ラットのLD50: 37~87 mg/g (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989)、JMPR (1965)、HSDB (Access on May 2020))
(6) ラットのLD50: 37~167 mg/g (ACGIH (7th, 2010))
(7) ラットのLD50: 46 mg/kg (MOE初期評価第1巻 (2002))
(8) ラットのLD50: 51~64 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(9) ラット (新生児) のLD50: 168 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、ATSDR (2002)、EHC 91 (1989))

【参考データ等】
(10) ヒトの推定LD50: 5 mg/kg (Patty (6th, 2012))
(11) ヒトの推定LD50: 65 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))
(12) ヒトの致死量: 約5 g/kg (約100 mg/kg: 体重50kgとして算出) (ACGIH (7th, 2010))
経皮
【分類根拠】
(1)~(4) より、区分2とした。
なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雌: 60 mg/kg (ATSDR (2002)、HSDB (Access on May 2020))
(2) ラットのLD50: 60~90 mg/kg (ACGIH (7th, 2010)、食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989)、GESTIS (Access on May 2020))
(3) ラットのLD50: 雄: 90 mg/kg (ATSDR (2002)、MOE初期評価第1巻 (2002)、HSDB (Access on May 2020))
(4) ウサギのLD50: < 150 mg/kg (HSDB (Access on May 2020))

【参考データ等】
(5) ウサギのLD50: 150 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))
(6) ウサギのLD50: 250 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020))
(7) ウサギのLD50: 250~350 mg/kg (ACGIH (7th, 2010))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
(1) より、区分1とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (0.0001 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 0.013 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(2) 本物質の蒸気圧: 5.89E-006 mmHg (25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 0.0001 mg/L)

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ウサギを用いた皮膚刺激性試験において粉体では皮膚には変化が認められず、植物油に溶解することにより軽度の刺激性及びうろこ状の変化が認められた (食安委 農薬評価書 (2013))。
(2) 本物質はウサギの皮膚に軽度~重度の刺激性を示すが、これは溶媒による影響である (EHC 91 (1989))。
(3) 本物質 (テクニカルグレード) の粉体はウサギの皮膚に数週間適用してもごく軽度の紅斑が観察されることはあるが、殆ど刺激性は示さない (GESTIS (Access on May 2020))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。

呼吸器感作性

【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】
(1) の記載はあるが、データ不足のため分類できないとした。

【参考データ等】
(1) 大規模なばく露集団で感作性と思われる反応がみられなかたことから、感作性はないと思われる (EHC 91 (1989)、GESTIS (Access on May 2020))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】
(1)~(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウスを用いた優性致死試験及び相互転座試験、チャイニーズハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスの骨髄を用いた小核試験において陰性の報告がある (EHC 91 (1989)、JMPR (1977)、ATSDR (2002)、ACGIH (7th, 2001))。
(2) in vitroでは、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、ラットの培養細胞を用いた姉妹染色分体交換試験において陽性、ヒトの末梢血リンパ球又は哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陽性又は陰性、マウス又はラットの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験において陽性及び陰性の結果が得られた。また、細菌の復帰突然変異試験で陰性、ほ乳類培養細胞を用いた形質転換試験で陰性の結果が得られた (EHC 91 (1989)、JMPR (1977)、ATSDR (2002)、IRIS (1988)、ACGIH (7th, 2001)、CEBS (Access on May 2020))。
(3) 本物質にばく露された労働者において、末梢血リンパ球の染色体に異常は認められなかったとの報告がある (EHC 91 (1989)、ATSDR (2002))。
(4) 食安委農薬評価書において「生体において問題となる遺伝毒性はないものと考えられた」との記載がある (食安委 農薬評価書 (2013))。

発がん性

【分類根拠】
(1) のIARCの最新評価及びその根拠となった (2)~(4) の情報等に基づき、区分1Bとした。IARCの最新の分類結果に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2A (IARC 117 (2019))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2010))、EPAでB2 (probable human carcinogen) (IRIS (1988))、EU CLPでCarc. 2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 本物質へのばく露に関連するがんのリスクに関する複数の疫学研究が報告されており、乳がん、非ホジキンリンパ腫、肺がん、白血病について、本物質へのばく露によりリスクが増加したとする報告と、増加しなかったとする報告がある (IARC 117 (2019))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を52週間~2年間混餌投与した発がん性試験が、複数の系統を用いて多数実施されている。これらの試験のほとんどで、雌雄マウスに肝腫瘍 (肝細胞腺腫及びがん) の有意な発生率の増加が認められた (IARC 117 (2019))。また、雌のトランスジェニックマウスに本物質を交配2週間前から妊娠期及び授乳期を通して離乳まで強制経口投与した試験において、胸部乳腺腫瘍 (主に乳腺腺がん) の発生率の有意な増加が認められた (IARC 117 (2019))。
(4) 雌雄のラット及びハムスターに本物質を2年間混餌投与した発がん性試験では、投与による腫瘍発生の有意な増加は認められなかった (IARC 117 (2019))。
(5) 雄のラット及びマウスに肝発癌物質であるジエチルニトロソアミンを腹腔内投与後、本物質を30日又は60日間混餌投与した肝腫瘍誘発試験では、マウスで肝臓の限局性病変の数、その体積及びDNAラベリング指数に有意な影響が認められた。ラットではこれらに影響は認められなかった (食安委 農薬評価書 (2013))。

生殖毒性

【分類根拠】
(1)~(5) の繁殖試験において、授乳期の児動物の死亡率増加がみられた。原因として (3)、(4) より、母動物毒性 (知覚過敏、過活動) によって適切な授乳ができない可能性、あるいは、(3)、(5)、(6) 及び (7) より、胎盤移行や母乳を介した児動物毒性の可能性が示された。(8)~(10) の発生毒性試験において催奇形性を示す明確な証拠は得られていないが、(11) よりアルドリンとの類似性を考慮した。また、(5) より、乳汁移行がみられている。したがって、区分1B、追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響とした。なお、授乳影響を加えたことから旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、最高用量群のF1b 児動物で死亡率の増加が認められた (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(2) ラットを用いた混餌投与による3世代繁殖試験において、授乳期間中の児動物の死亡率増加がみられた (食安委 農薬評価書 (2013))。
(3) ラットを用いた混餌投与による繁殖試験において、離乳期に生存児数の減少がみられ、児動物は痙攣 (43%) 又は飢 え (57%) で死亡した。飢えの原因は、母動物及び児動物の知覚過敏のために適切な授乳ができなかったためと考えられている (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。なお、この試験において、神経障害 (大脳浮腫及び水頭等) が母動物毒性の記載のない最低用量群の児動物で認められたが、より高用量では認められなかったとあり、この変化については影響としなかった。
(4) マウスを用いた混餌投与による繁殖試験においても離乳前の児動物の死亡率の増加がみられ、母動物の過活動が児動物の死亡の原因と考えられている (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(5) ラットを用いた混餌投与による繁殖試験において、児動物の生存率減少がみられ、この試験での母乳中のディルドリン濃度は飼料中濃度の17倍高く、乳汁への最大分泌量は授乳期間当たり1~4 mgであったことが示されている (食安委 農薬評価書 (2013))。
(6) マウスを用いた混餌投与による繁殖試験において、出生前ばく露を受けた児動物を非ばく露群の母動物に哺育させた結果、全ての児動物で4日以内の死亡が確認された (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(7) 妊娠ラット、マウス、ウサギを用いて試験において胎盤透過性がある結果が示されている (食安委 農薬評価書 (2013))。
(8) 雌ラット、ウサギの妊娠期に強制経口投与した発生毒性試験において、奇形はみられていない (EHC 91 (1989)).
(9) 雌マウスの妊娠6~14日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で胎児に過剰肋骨の増加がみられ、母動物毒性 (体重増加抑制及び肝比重量の増加) がみられた用量の胎児においてはさらに、尾部の骨化中心の数の減少が認められた (食安委 農薬評価書 (2013)、EHC 91 (1989))。
(10) 雌ハムスターの妊娠7、8、または9日に、強制経口投与した発生毒性試験において、生存胎児数と胎児の体重が減少し、異常(口蓋裂、眼瞼開存、水かき足)の発生率が増加した。 眼瞼開存、水かき足は、胎児の低体重と頻繁に関連していたため、これらの効果は単に成長遅延の発現である可能性があることが示唆された (EHC 91 (1989))。EHC 91 (1989) では、重度の母体毒性の存在下でのこれらの異常の重要性は疑わしいが、特定の催奇形性の可能性を完全に排除することはできないとしている。
(11) 哺乳類において、催奇形性を示すアルドリンは代謝され本物質となる(食安委 農薬評価書 (2013))。

12. 環境影響情報

生態毒性

水生環境有害性 (急性)
甲殻類 (ブラウンシュリンプ) の96時間LC50 = 0.4 μg/L (EHC91 (1989)) から、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)
急性毒性が区分1、急速分解性がなく (BODによる分解度: 0% (既存化学物質安全性点検データ))、生物蓄積性がある (BCF = 14,500 (既存化学物質安全性点検データ)) ことから、区分1とした。

オゾン層への有害性

-

13. 廃棄上の注意

残余廃棄物

廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。

汚染容器及び包装

容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14. 輸送上の注意

国際規制

国連番号
2761
国連品名
ORGANOCHLORINE PESTICIDE, SOLID, TOXIC
国連危険有害性クラス
6.1
副次危険
-
容器等級
I
海洋汚染物質
該当する
MARPOL73/78附属書Ⅱ及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質
-

国内規制

海上規制情報
船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報
航空法の規定に従う。
陸上規制情報
毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。

特別な安全上の対策

毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物

その他 (一般的) 注意

輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。

緊急時応急措置指針番号*

151

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【506 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【506 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 作業場内表示義務(法第101条の4)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

-

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条)【89 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリンを含有する製剤】 劇物(法第2条別表第2)【75 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン】

化学物質審査規制法

第1種特定化学物質(法第2条第2項・施行令第1条)【5 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレン】

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 ヘキサクロルエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリンを含有する製剤】

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2761 殺虫殺菌剤(有機塩素系)(固体)(毒性のもの)】

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2761 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

港則法

その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

海洋汚染防止法

個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】2761 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

農薬取締法

販売禁止農薬(法第18条第2項、平成15年3月5日省令第11号)【4 1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エキソ-5,8-ジメタノナフタレン】

化審法

第1種特定化学物質

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
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