安全データシート

4-ホスホノ-3-アザブタン酸

改訂日:2024-05-09版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: 4-ホスホノ-3-アザブタン酸
  • CB番号: CB7680517
  • CAS: 1071-83-6
  • EINECS番号: 213-997-4
  • 同義語: グリホサート,4-ホスホノ-3-アザブタン酸

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 農薬(除草剤) (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
発がん性   区分2
生殖毒性   区分2
分類実施日(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性
水生環境有害性 短期(急性)   区分1
水生環境有害性 長期(慢性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS05GHS07GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H312 皮膚に接触すると有害。
H318 重篤な眼の損傷。
H411 長期継続的影響によって水生生物に毒性。
注意書き
安全対策
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P302 + P352 + P312 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P391 漏出物を回収すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Glyphosate
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C3H8NO5P
  • 分子量: 169.07 g/mol
  • CAS番号: 1071-83-6
  • EC番号: 213-997-4
  • 化審法官報公示番号: 2-3067
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸入後は新鮮な空気を吸うこと。
皮膚に付着した場合
皮膚に接触した場合: すべての汚染された衣類を直ちに脱ぐこと。 皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 医師に相談する。
眼に入った場合
眼に触れた後は多量の水ですすぐこと。 ただちに眼科医の診察を受けること。 コンタクトレンズをはずす。
飲み込んだ場合
飲み込んだ後はただちに水を飲ませること(多くても2杯) 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
本物質/混合物に対する消火剤の制限なし
適切な消火剤
水 泡 二酸化炭素(CO2) 粉末

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物
窒素酸化物(NOx)
リンの酸化物
可燃性。
火災時に有害な燃焼ガスや蒸気を生じるおそれあり。

5.3 消防士へのアドバイス

自給式呼吸器がある場合のみ危険区域に留まってもよい。安全なゾーンまで離れるか適切な保護衣を着用して、皮膚に触れないようにすること。

5.4 詳細情報

ガス/蒸気/ミストを水スプレージェットで抑える(除去する)。 消火水が、地上水または地下水のシステムを汚染しないようにする。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

救急隊員以外への助言: ほこりを吸い込まないこと。 触れないようにすること。 十分な換気を確保する。 危険なエリアから避難し、緊急時手順に従い、専門家に相談のこと個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

物質が排水施設に流れ込まないようにする。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

排水溝に蓋をすること。こぼれたら集めて結合させ、ポンプですくい取る。 物質の制限があれば順守のこと (セクション 7、10参照) 乾燥剤で処置すること。正しく廃棄すること。関係エリアを清掃のこと。ほこりを生じないようにすること。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 11: 可燃性固体
保管条件
密閉のこと。 乾燥。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
OEL-M: 1.5 mg/m3 - 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
汚した衣類はただちに替えること。予防的な皮膚保護を講じること。本物質を取り扱った後は手と顔
を洗うこと。
保護具
眼/顔面の保護
NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規格で試験され、認められた眼の
保護具を使用する。 密着性の高い安全ゴーグル
皮膚及び身体の保護具
本推奨は、当社発行の安全データシート,に記載されている製品およびその指定の使用法のみに
適用される。溶解、他の物質との混合、およびEN374に記載の逸脱条件での使用については、
CE認証手袋のサプライヤに問い合わせのこと(例. KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, Internet:
www.kcl.de)
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:KCL 741 Dermatril® L
身体の保護
保護衣
呼吸用保護具
ほこりが生じた際に必要。
次の規格に準拠しているフィルター式呼吸器保護具を推奨します。DIN EN 143、DIN 14387お
よび使用済み呼吸器保護システムに関連する他の付属規格。
環境暴露の制御
物質が排水施設に流れ込まないようにする。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色
臭い
無臭

融点/凝固点

200 ℃(Howard(1997)) 230 ℃(分解温度)(Merck(2013)) 189.5 ℃(HSDB(2022))

沸点、初留点及び沸騰範囲

データなし

可燃性

可燃性あり(ICSC(2021))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

データなし

引火点

データなし

自然発火点

データなし

分解温度

230 ℃(GESTIS(2022))

pH

データなし

動粘性率

データなし

溶解度

水: 10200000 mg/L(25℃)(Howard(1997)) 水: 1.2 g/100mL(25℃)(ICSC(2005)) 水: 10.5 g/L(20℃、pH 1.9)(HSDB(2022))

n-オクタノール/水分配係数

log P: -4.47(Howard(1997)) log Pow: -1(ICSC(2005)) log Kow: -3.4(HSDB(2022))

蒸気圧

0.000000000289 mmHg(25℃)(Howard(1997)) 20℃(ほとんどない)(ICSC(2005)) 9.8X10-8 / 1.31X10-2 mmHg / mPa(25℃)(HSDB(2022))

密度及び/又は相対密度

1.7 g/cm³(ICSC(2005)) 1.705 -(20℃)(HSDB(2022))

相対ガス密度

データなし

粒子特性

データなし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

可燃性有機物質及び製剤に概ね該当:微細に分散し、舞い上がった場合、粉じん爆発を起こす可能性が
通常想定される。

10.2 化学的安定性

標準的な大気条件(室温)で化学的に安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

情報なし

10.5 混触危険物質

強酸化剤, 金属, 塩基類

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(6)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50:4,320 mg/kg(ATSDR (2022)) (2)ラットのLD50:5,600 mg/kg(JMPR (2016)) (3)ラット(雄)のLD50:11,300 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)) (4)ラット(雌)のLD50:10,500 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)) (5)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(CLH Report (2017)) (6)ラットのLD50:> 5,000 mg/kg(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)、EHC 159 (1994))
経皮
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2016)、産衛学会許容濃度の勧告等 (2022)、CLH Report (2017)、EHC 159 (1994)) (2)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(CLH Report (2017) 、EHC 159 (1994)) (3)ラットのLD50:> 5,000 mg/kg(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1)~(3)より、区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間、グリホサート酸及びその塩):> 5 mg/L(EFSA (2015)) (2)ラットのLC50(4時間、粉じん、鼻部ばく露):> 5.04 mg/L(CLH Report (2017)) (3)ラットのLC50(4時間、粉じん):> 5.48 mg/L(CLH Report (2017))
【参考データ等】 (4)ラットのLC50(4時間):> 4.43 mg/L(産衛学会許容濃度の勧告等 (2022))

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 3または6)を用いた皮膚刺激性試験の11試験中の9試験において刺激性変化はみられなかった。その他の2試験(OECD TG404)においては、各1/3例で軽度の紅斑がみられたが、24~48時間以内に回復したとの報告がある(EU CLP CLH (2017))。 (2)本物質はウサギの皮膚に刺激性を示さなかった(JMPR (2016))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)~(3)より、区分1とした。
【根拠データ】 (1)ウサギ(n=2)を用いた眼刺激性試験(21日観察)において、角膜混濁、虹彩炎、結膜の充血、浮腫及び分泌物など重大な傷害がみられ、1例の影響は21日以内に回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。 (2)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(21日観察)において、角膜混濁(平均スコア1~2.7)、結膜発赤及び浮腫が6/6例に認められた。3/5例(1例偶発的死亡)でみられた影響は21日以内に回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。 (3)ウサギ(n=1)を用いた眼刺激性試験(24時間観察)において、1例で重度の眼の損傷が24時間後にみられ、試験は24時間で終了した。みられた所見は角膜混濁とびらん、結膜の発赤、浮腫、分泌物、黒点は少ないが眼瞼の浮腫と24時間後のフルオレセイン染色陽性であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017)、CLH Report (2016))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)モルモット(n= 20)を用いたMaximisation試験(GLP、皮内投与:10%溶液)において、惹起終了24、48時間後の陽性率は0%(0/20例)であったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、農薬抄録 (2016))。 (2)マウスを用いたLLNA法による2試験及びモルモットを用いたMaximisation法による12試験の全ての試験結果で陰性であった(EU CLP CLH (2017))。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)~(4)より、in vivoで一部陽性知見がみられた試験は試験方法に問題があること、in vitroの試験ではすべて陰性であること、(5)~(7)において遺伝毒性に関する十分な証拠が得られていないと結論されていることから、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1)In vivoでは、マウスを用いた優性致死試験(単回経口投与、200~2,000 mg/kg)及びラットを用いた優性致死試験(単回経口投与、5,000 mg/kg)及びラットの骨髄細胞を用いた小核試験(単回腹腔内投与、1,000 mg/kg)において、陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、農薬抄録 (2016))。 (2)In vivoでは、げっ歯類(マウス6試験、ラット1試験)の骨髄細胞を用いた経口投与(最大2,000又は5,000 mg/kg)による小核試験(OECD TG474、GLP)の結果は、マウス、ラットの6試験で陰性の報告がある。マウス1試験では最高用量群の雌で小核を有する多染性赤血球の比率の増加(雄は有意差なし)がみられ、弱陽性と判定された。また、マウスの骨髄細胞を用いた腹腔内投与(15.6~563 mg/kg)による小核試験7試験のうち、5試験で結果は陰性の報告がある。他2試験は陽性と判断されたが、方法論的に問題があり(記述不十分、例数が少ない、観察細胞数が少ない等)、結果の解釈には注意が必要と指摘されている(EU CLP CLH (2017))。 (3)グリホート含有製品は300 mg/kg(グリホサート換算用量)を腹腔内投与したマウスの肝臓と腎臓で一本鎖DNA切断を、腎臓の細胞で酸化的DNA損傷を誘導した。しかし、この用量では肝臓と腎臓に高度の毒性を生じることから、肝臓と腎臓におけるDNA鎖切断は臓器毒性を介した二次的影響の可能性を否定できない。一方、グリホサート含有製品を腹腔内投与後のマウスの肝臓と腎臓でDNA付加体形成を生じることが報告された。分析用グレードのグリホサートを270 mg/kgで同様に腹腔内投与したマウスではDNA付加体形成がみられなかったことから、DNA付加体形成はグリホサート製品中の他成分に関連した影響の可能性が考えられた(ATSDR (2020))。 (4)In vitroは、細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子変異試験結果は全て陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017)、IARC 112 (2017))。 (5)グリホート含有製品による実験において、変異原性・遺伝毒性を有する可能性を示唆する結果がみられるが、グリホサート原体でのその証拠は不十分である(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (6)EPAは、グリホサート原体について、経口経路を介して引き起こされる体内での遺伝子突然変異の誘発について説得力のある証拠がないと結論付けている。グリホサート誘発性炎症の可能性について高用量ばく露によって引き起こされる毒性に続発する遺伝毒性効果 (すなわち、グリホサート誘発性炎症、酸化ストレス、8-OH-dG、および姉妹染色分体交換または SCE) に関連している(EPA Proposed Interim Decision (2019))。 (7)ECHAは、グリホサートについて、特定標的臓器毒性、発がん性、変異原性、生殖毒性の項目で利用可能な科学的証拠がなく分類する基準を満たしていないとしている(ECHA RAC Opinion (2017))。
【参考データ等】 (8)IARCはグリホサートの発がん性分類をグループ2Aに引き上げた根拠の一つとして、グリホサート原体が遺伝毒性物質である強い証拠があると結論している(IARC 112 (2017))。

発がん性

【分類根拠】 (1)のヒトでの調査での発がん性の限られた証拠をもとに区分2とした。新たな情報源を利用し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)本物質の使用履歴と非ホジキンリンパ腫(NHL)との関連についての疫学研究について、14の症例対照研究のうち4つで統計的に有意な関連が観察されたものの、質の高いコホート研究である農業従事者を対象とした米国の大規模コホート研究(Agricultural Health Study、AHS)では有意な関連は観察されなかった。一方、AHSと5つの症例対照研究を含むメタ解析では有意な観察されたものの、AHSと2つのコホート研究を含むメタ解析では本物質の使用履歴とNHLで有意な関連は観察されず、関連性の一致性がみられなかったことから、日本産業衛生学会はグリホサートの発がん性に関する疫学的証拠は限定的であると結論している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (2)動物を用いた発がん性試験については、ラットとマウスを用いた多くの試験があるが、その結果はがん発生の有無やその部位の一貫性に欠けること、OECDのテストガイドライン上で大量ばく露とされる投与量における試験結果が含まれることから、日本産業衛生学会は証拠が十分でないと結論している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (3)日本産業衛生学会で第2群B(区分2相当)に分類され(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))、IARCはヒト疫学、動物試験データ及び作用機序の評価結果に基づき、以前の分類区分(2B)からグループ2A(区分1B相当)に分類した(IARC 112 (2017))。
【参考データ等】 (4)EUの評価では、ラットでみられた良性の腫瘍性病変(膵島腺腫と肝細胞腺腫)は雄のみ、7試験中5試験でみられなかったことから、グリホサート誘発性の腫瘍の確たる証拠はないと結論された。また、マウスでは一部の試験でみられた腎尿細管腫瘍、血管肉腫及び悪性リンパ腫の3つの腫瘍のうち、5試験中4試験の高用量群の雄マウスにみられた悪性リンパ腫が注目されたが、腫瘍発生率は試験間でのばらつきが大きく、多くは利用可能な対照群の発生頻度の範囲内で、これより高い腫瘍発生率の試験ではリンパ節の非腫瘍性病変に並行的な増加がみられず投与に関連した腫瘍発生かどうか疑わしく、雌雄間での不一致性、ラットの試験結果からマウスにおける発がん性の確たる証拠はないと結論された(EU CLP CLH (2017))。 (5)IARCは、いくつかの症例対照研究において、グリホサートへのばく露と関連した非ホジキンリンパ腫(NHL)のリスクの増加の報告があるが、大規模なAHS(US Agricultural Health Study)のコホート研究ではNHLの過剰を示すことができず、ヒトでの発がん性の証拠は限られると結論した(IARC 112 (2017))。

生殖毒性

【分類根拠】 実験動物を用いた標準的な生殖発生毒性試験結果からは、本物質の生殖発生影響について否定的な報告もあるが、(1)~(4)の新たな知見に基づき、女性の性機能への有害影響を否定できないことから区分2とした。なお、新たな情報源を利用し分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)アメリカのインディアナポリスで実施された妊婦(n= 71、平均年齢29歳)を対象とした前向きコホート研究では、尿中グリホサート濃度(妊娠11~38週)をばく露指標とし、出生児の成長指標との関連はなかったが、妊娠期間の短縮との関連がみられたとの報告がある(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (2)グリホサートの0.5%水溶液とグリホサート含有製品の0.5%水溶液を妊娠ラットに飲水投与(妊娠0~18日)し妊娠18日に剖検した。対照群との比較において、両投与群とも体重増加抑制と卵巣重量の減少がみられた。成熟卵胞数は対照群(平均値10.67)と比べてグリホサート0.5%水溶液投与群(同2.33)及び市販製品0.5%水溶液投与群(同6.00)では減少した。一方、閉鎖卵胞数は対照群(1.67)と比べてグリホサート投与群(14.00)及び市販製品投与群(6,33)と増加した。また、両投与群では卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)mRNAの発現低下がみられた(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (3)ウサギを用いた7つの強制経口投与による発生毒性試験結果について、EUは顕著な母動物毒性(死亡、下痢等)がみられる用量で、着床後胚損失率の低下、胚/胎児死亡の増加、低頻度の奇形発生(心血管奇形、骨格奇形)が認められた。頭蓋顔面の明瞭な骨格奇形が1つの試験で報告されたが、他の6試験でも同様の奇形発生例が500 mg/kg/day以上の用量でみられたことを付記した(EU CLP CLH (2017))。 (4)(3)のウサギを用いた7つの強制経口投与による発生毒性試験結果について、日本産業衛生学会では、ウサギの胎児でみられた発生影響は母動物の下痢や体重増加抑制等による二次的な影響の可能性を否定できないが、母動物毒性のみで発生影響をすべて説明することは困難である旨の見解を示している(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (5)日本産業衛生学会で生殖毒性分類第3群に分類された(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。
【参考データ等】 (6)マウスを用いた飲水投与試験(胎生10.5日~離乳(生後20日)、0.5~50 mg/kg/day)において、雄出生児を生後5、20、35日及び8ヵ月齢で剖検した結果、生後20日の雄児の精巣に形態異常がみられ、生後35日の雄児では血清テストステロン値の有意な低下が認められた。これらの影響は0.5 mg/kg/day群でも認められたが、用量依存性は明確でなかった。8ヵ月齢の雄動物では、精子数、精巣重量等に用量依存的な影響はみられなかった(産衛学会許容濃度の勧告等 (2021))。 (7)ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(1,000~10,000 ppm)において、親動物では最高用量のF1雄に体重増加抑制及び摂餌量低下が認められたが、雌では毒性所見は認められなかった。児動物では最高用量群のF1雌雄で体重増加抑制がみられた。最高用量の10,000 ppmまで親動物の生殖能への影響は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017))。本試験を含めてグリホサートのラットを用いた6つの二世代生殖毒性試験では、親動物の受胎能への有害影響は認められなかった(EU CLP CLH (2017))。 (8)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(妊娠6~15日)では、限度量の1,000 mg/kg/dayまでの用量で母動物、胎児に影響は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2016)、EU CLP CLH (2017))。本試験を含めてグリホサートのラットを用いた6つの発生毒性試験から、顕著な母動物毒性(死亡、体重増加抑制、症状等)が生じる用量で、胎児に骨化遅延、骨格奇形(低頻度)がみられたが、二次的影響の可能性もあり、本物質投与による発生毒性の十分な証拠は得られなかった(EU CLP CLH (2017))。 (9)グリホサートばく露がヒトの生殖能に及ぼす影響について検討された7つの疫学研究報告を精査した結果、多産能、流産、早産、妊娠糖尿病、出生時体重、先天性奇形、神経管障害、子供における注意欠陥障害/注意欠陥多動性障害(ADD/ADHD)の発生には、グリホサートばく露とは統計的に有意な正の関連はないと考えられた(EU CLP CLH (2017))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(5)より、区分に該当しないとした。経口、経皮及び吸入経路において、本物質に特異的な標的臓器毒性はないと考えられた。なお、新たな知見に基づき分類結果を変更した。
【根拠データ】 (1)EUでの調査では、グリホサート単独ばく露によるヒトの中毒情報はないが、グリホサート含有製品(除草剤)を経口摂取または吸入して急性中毒を生じた事故例の報告は多数ある。ヒトでの気道刺激を報告した1症例も本物質含有製品へのばく露によるもので活性成分のグリホサート単独によるものでなく、製品に含まれる非イオン性界面活性剤による影響とみられている(ECHA RAC Opinion (2017))。 (2)24件のラットおよび4件のマウスを用いた単回経口投与試験では、すべて2,000 mg/kg(区分2の範囲)以上の高用量で実施されており、最も多くみられた症状は呼吸困難、下痢、活動性低下、運動失調、立毛、痙攣及び円背姿勢であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (3)20件のラットおよび1件のウサギを用いた単回経皮投与試験では、すべて2,000 mg/kg(区分2の範囲)以上の高用量で実施されており、最も多くみられた症状は体重低下、下痢及び軽度の局所影響であったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (4)13件のラットを用いた単回吸入ばく露試験において、8試験が5.0 mg/L(区分2の範囲)でばく露され、残りの5試験は試験最高濃度の2.0 mg/L~4.43 mg/L超(区分2の範囲)でばく露された。最も多くみられた症状は、上気道の刺激、活動亢進、呼吸数の増加/減少、立毛、脱毛、被毛湿潤、軽度体重減少、軽度振戦及び軽度運動失調であり、これらの症状は試験間で一致して報告されたものではなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2017))。 (5)ラットを用いた経口投与による急性神経毒性試験において、2,000 mg/kg(区分2の範囲)で雌3/10例で活動性低下、行動抑制、うずくまり姿勢又は体温低下、下痢、削痩、つま先歩行、異常発声がみられ、1 例がその後死亡した。これらの所見は検体投与に関連したものであるが、神経毒性に特異的なものではなく、グリホサートの高用量投与に関連した一般毒性を反映したものと考えられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016)、ECHA RAC Opinion (2017))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

【分類根拠】 (1)、(2)より、経口経路では区分に該当しない。ただし、他経路での毒性情報がなくデータ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1)2件のラットを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験、マウスを用いた混餌投与による90日間反復経口投与試験、イヌを用いたカプセル投与による1年間慢性毒性試験において、検体投与に関連した毒性所見はみられなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016))。 (2)ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、20,000 ppm(940 mg/kg/day(雄)、1,180 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で雄に白内障様変化又は水晶体線維変性及び水晶体混濁(眼科的検査)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2016))。
【参考データ等】 (3)疫学的なデータは全て本物質を含む農薬製剤にばく露された人を含む報告で、活性物質である原体のみにばく露されたわけではなく、しかも他の農薬にもばく露されている可能性があるため、本物質のヒトへの反復ばく露影響として利用可能な報告はない(CLH Report (2016))。

誤えん有害性*

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 1.1 mg/l - 96.0 h
死亡率 最大無影響濃度 - Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 1.500 mg/l -
96.0 h
ミジンコ等の水生無脊 椎動物に対する毒性
EC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 2.95 mg/l - 48 h

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

データなし

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
内容物及び容器は、関連法規及び各自治体の条例等の規制に従い、産業廃棄物として適切に処理すること。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 3077    IMDG (海上規制): 3077    IATA-DGR (航空規制): 3077

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, SOLID, N.O.S. (N-
(Phosphonomethyl)glycine)
IMDG (海上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, SOLID, N.O.S. (N-
(Phosphonomethyl)glycine)
IATA-DGR (航空規制): Environmentally hazardous substance, solid, n.o.s. (N-
(Phosphonomethyl)glycine)

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 9    IMDG (海上規制): 9    IATA-DGR (航空規制): 9

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 該当
該当

14.6 特別の安全対策

14.7 混触危険物質

強酸化剤, 金属, 塩基類
詳細情報
危険物(液体 >5Lまたは固体 >5kg)を有する内装容器を含む、単一容器および複合容器に必要とされる
EHSマーク(ADR 2.2.9.1.10, IMDGコード 2.10.3)5 kg / L 以下で、危険物クラス 9 に該当しないパッケー

15. 適用法令

労働安全衛生法

労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付の義務化候補物質リスト(令和4年)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)(令和5年度以降の対象)

毒物及び劇物取締法

該当しない

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4)

船舶安全法

有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

化審法

新規公示化学物質(2011年3月31日以前届出)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
免責事項:

本MSDS中の情報は指定された製品にのみ適用され、特に規定がない限り、本製品とその他の物質の混合物には適用されません。本MSDSは、製品使用者の適切な専門的なトレーニングを受けた者にのみ製品安全情報を提供します。本MSDSの使用者は、本SDSの適用性について独自に判断しなければならない。本MSDSの著者は、本MSDSの使用によるいかなる傷害にも責任を負わない。

推奨製品
(+/-)-1-(9-FLUORENYL)ETHANOL SDS 2-アミノ-4-(メチルホスホニル)ブタン酸アンモニウム SDS ステアリン酸 SDS 葉酸水和物 SDS グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸) SDS PMIDA SDS 4-ホスホノ-3-アザブタン酸 SDS D-(-)-2-(4-ヒドロキシフェニル)グリシン SDS GLYPHOSATE-2-13C SDS くえん酸 SDS