急性毒性
経口
ラットLD50値: 955、890、756、802 mg/kg bw (JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。(GHS分類:区分4)
経皮
データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入
吸入(粉じん): ラットLCLo値: = 2900 mg/m3(RTECS (2009):元文献 Acute Toxicity Data. Journal of the American College of Toxicology, Part B, 1, 753, 1992)。なお、毒性値(LCLo = 2.9 mg/L)が飽和蒸気圧濃度(0.3 mg/L)より高いので粉じんの区分基準値を適用した。(GHS分類:データ不足で分類できない。)
吸入(蒸気): データなし。(GHS分類:分類できない)
吸入(ガス): GHSの定義における固体である。(GHS分類:分類対象外)
皮膚腐食性・刺激性
本物質を含む口紅でばく露を受けた被験者271人中、1人に0.14%の製品のばく露で非特異的な刺激を示唆する強い紅斑を示した(NTP TR459 (1997))。 (GHS分類:データがなく分類できない。)
眼に対する重篤な損傷・刺激性
データなし。(GHS分類:分類できない)
呼吸器感作性又は皮膚感作性
皮膚感作性:抗酸化剤である本物質は口紅や染毛剤などの化粧品、または切削油に使用され、感作物質としての報告は稀であるが、ブチルヒドロキシアニソールに対する交差反応の記述があり、感作物質として掲載されている(Contact Dermatitis (4th, 2006))。なお、顔面に皮膚炎のある患者のパッチテストにおいて、1096人中5人が化粧品中の本物質にアレルギー反応を示した(NTP TR 459 (1997))、また、15年間にわたり皮膚炎を有する75歳の女性に本物質に対するアレルギー反応が見出された(NTP TR 459 (1997))。(GHS分類:区分1)
呼吸器感作性:データなし。(GHS分類:分類できない)
生殖細胞変異原性
マウスに腹腔内または経口投与による骨髄を用いた小核試験および染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)において陰性(NTB DB (Access on Aug. 2010)、JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。なお、マウスに腹腔内または経口投与による骨髄を用いた別の小核試験および染色体異常試験では陽性結果(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))も報告されているが、サンプリング時間が不適切なこと、染色体異常にギャップが含まれていることなどデータに対する問題点の指摘(NTB DB (Access on Aug. 2010)、JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998)))がある。また、ラットを用いた優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)で陰性、マウスの骨髄を用いた姉妹染色分体交換試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)で陰性(NTB DB (Access on Aug. 2010))、in vitro試験としてはエームス試験で陰性(NTB DB (Access on Aug. 2010))、染色体異常試験で陽性(NTB DB (Access on Aug. 2010))、CHO細胞を用いたHGPRT試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。(GHS分類:区分外)
発がん性
ラットに123~129週間、およびマウスに104~105週間混餌投与した試験において、高用量群では動物の体重は対照群に比べ低く、両動物種とも試験物質ばく露に帰する腫瘍発生率の増加はなく、むしろラットでは乳腺腫瘍の発生率が有意な減少が見られた(NTP TR 459 (1997))。また、雌雄ラットおよび雌雄マウスに2年以上経口ばく露した試験で発がん性の証拠は得られなかったと結論がある(NTP TR 459 (1997))。(GHS分類:区分外)
生殖毒性
ラットに混餌投与による2世代試験の各世代で体重および摂餌量の低下が見られたが、交配、受胎、妊娠の指標、平均同腹仔数または平均出生仔数に影響がなく、離乳までの仔の生存率も対照群と変わらなかった(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。また、妊娠ラットの器官形成期に混餌投与した試験では、黄体数、着床数、生存胎仔数、吸収胚数、死亡率は投与群と対照群の差がなく、骨格変異の有意な増加のみが見られたが、催奇形性を有しないと結論されている(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。なお、ラットに混餌投与した3世代試験で、出生後離乳までの間の同腹仔の死亡率がF1aおよびF2aで増加したが、F1bおよびF2bではその影響が見られなかった(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))ことから、一貫性のあるデータではないと判断される。(GHS分類:区分外)
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ラットに経口投与直後に運動失調が現れたが、2-3時間で回復した(JECFA WHO FOOD SDDITIVES SERIES 40 (1998))。(GHS分類:データ不足で分類できない。)
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットおよびマウスを用いた13週間混餌投与試験において、ラットで5000 ppm (400 mg/kg/day)以上で体重および摂餌量の低下、鼻腔上皮の過形成の発生増加が認められたが、2500 ppm (200 mg/kg/day)では被毛の変色を除き試験物質投与の影響は報告されていない(NTP TR 459 (1997))。また、マウスでは10000 ppm (1950~2200 mg/kg/day)以上で体重および摂餌量の低下、前胃粘膜の過形成および鼻腔の炎症の発生増加が認められたが、5000 ppm (880~1100 mg/kg/day)では試験物質投与の影響は報告されていない(NTP TR 459 (1997))。(GHS分類:経口経路では区分外に相当するが、データ不足で分類できない。)
吸引性呼吸器有害性
データなし。(GHS分類:分類できない)